「山手線を1周歩いてみよう!」という気軽な気持ちで、山手線1周を歩くことにしました。
僕自身はもう二度とやりたくないと思えるほど過酷な挑戦になりましたが、これから歩く予定の方に辛かったポイントや、やって良かったことを共有します。
総距離約46kmの道を、スタート地点の新宿駅を午前7時に出発し、新宿駅に戻ってきたのは21時前。14時間の旅路です。ちなみに、エレベーター・エスカレーター禁止の縛りも加えています。
人生で一番歩いた一日について、写真も交えて詳しく紹介します。
- 山手線1周を歩いてみたい方
- 日常では味わえない体験がしたい方
山手線1周のコース
山手線沿線は、1周約46㎞とフルマラソンよりも距離があるコースです。
1日で7万歩近い歩数を歩く、人生で一番歩いた日となりました。
ちなみに山手線一周の「コース」は、標準的なものは存在せず、スマホの地図をみながら歩くのが一般的です。
歩き方にもこだわりがあり、「線路の外側を必ず歩く大回りコース」と「線路の周辺を歩くコース」の2パターンにわかれます。
今回、我々は後者の線路の周辺を歩くコースで実施しました(とはいえ、線路に一番近い道を選択して歩きました)。
これでも相当な距離を歩く羽目になるので、外回りを選んでいたらと思うとぞっとします。
私たちがつけた制約は以下の通りです。
- 線路に一番近い道を歩く
- エレベーター、エスカレーターは使わない
- 各駅の「JR」表記のある看板の写真を撮る
山手線1周レポート
全長46㎞の山手線を「新宿」スタートで、「渋谷」「品川」方面に向かって歩くコースにしました。山手線は、都内の中心を走る路線ですが、「高輪ゲートウェイ駅」が完成したことで、全30駅の駅があります。
新宿から恵比寿まで
スタートは午前7時。傘を差さないと少し不快感があるくらいの小雨がぱらつく中、長旅がはじまりました。
まずは、最初のチェックポイントに設定した恵比寿に向けて出発です。
まずは代々木に向け出発です。
新宿~代々木間は、日暮里~西日暮里間と並んで、おそらく全駅間の中で1・2を争う短い駅間です。
正直、新宿~代々木間を後半にまわしていれば、どれだけ気持ちが楽だっただろうと、歩ききった今では思います。
あっという間に代々木に到着し、休憩もそこそもに原宿、渋谷、恵比寿へと足を進めます。
恵比寿に到着したのは8時30頃。新宿をスタートし1時間30分で恵比寿に到着しました。日が出てきて汗ばんできたので、恵比寿のマクドナルドで小休止することに。朝マックを3年ぶりくらいに食しました。
このあたりは、まだまだ全然体力的にも余裕であり、マクドナルドで30分ほど、クールダウンと体力補給をして次に向かいました。
恵比寿から田町まで
次にチェックポイントに設定した田町に向けて出発です。駅としては6駅あります。
快調なペースで目黒、五反田、大崎と約1時間で足を進めました。
途中の五反田~大崎間では、目黒川沿いと交差するステキなスポットがありました。目黒川沿いで静かな時を過ごす家族連れを眺めながら、足を進めます。
大崎に着くと、次の品川に向け出発です。
山手線の丸い路線図を見ているだけでは気づきませんでしたが、大崎は山手線の丸い円から、かなり下にはみ出しています。
直線距離でいえば、大崎~品川間よりも五反田~品川間のほうが遠く、全駅間の中でもっとも長い50分も時間がかかってしまいました。後半に、大崎~品川間が来ていたらと思うとゾッとします。
品川に着くと人通りも増えてきました。次は、2020年に開業した高輪ゲートウェイです。
高輪ゲートウェイの駅前は、未だ工事中で大きな更地が広がっています。駅からだと工事の様子が見られるので、今しか見られない光景として見ておくと面白いかもしれません。
高輪ゲートウェイから田町はだいたい20分です。途中東京タワーを横目にしながら、歩き続けました。
このあたりで、靴擦れで右足のかかとに痛みが走り、絆創膏を貼りました。また、少し足に疲労が溜まりはじめました。
田町についたのは、11時30分頃。恵比寿を出発して2時間30分で到着です。
予想通りの良いペースで到着したので、昼食でつけ麺を食べました。
一旦、腰を下ろすと立ち上がった時に疲労感を感じます。「けっこう疲れたな~」と感じましたが、今となってはこの時の疲労感は、疲れているうちに入らないくらいの疲労感でした。
田町から東京まで
田町から浜松町、新橋、有楽町を抜け、次の目的地の東京までの4駅を歩きます。
東京駅は、新宿からみてだいたい1/2の14駅目です。
田町で一段階目の疲労が溜まったまま歩みを進めます。
疲労が溜まっているものの、新橋~東京間は、駅の高架下の飲み屋街を歩くことができるので最短距離を歩くことができます。
駅から離れると、そのぶん時間がかかってしまうので、最短距離を歩けるのは精神的にもかなりありがたいです。
東京駅についた頃には、田町の時からもう一段階疲労が増して、歩く度に足の裏に痛みが走りました。
到着時刻は、13時30分。田町を出発して1時間30分程度です。
時折、顔をゆがめながら、なんとか東京駅に到着しました。既に20m近く歩いており、足にかなり疲労が溜まっていることを感じます。
ちなみに、東京駅に東京オリンピックまでのカウントダウンのモニュメントがありました。当日はあと33日だったようです。
東京から上野まで
第二段階の疲労を抱え、東京から続いての目的地の上野までの4駅を歩きます。疲労はかなり溜まってきて、歩く度に足の裏に痛みが走ります。「あと半分いけるかな。。」と、正直不安を感じながら歩き始めます。
このころには、駅につくと2駅に1駅は駅前のガードレールで腰を据えるほど疲労と痛みが溜まっていました。
東京から秋葉原にかけて、街の雰囲気が一気に変わるので、進んでいる感じがして嬉しかったのを覚えています。
とはいえ、特に何をするでもなく上野に向けて街をスルー。上野で休憩することを目標に歩き続けました。
上野に到着したのは15時頃。東京から1時間30分程度で到着しました。
疲労と足の痛みで歩くペースが少しずつ遅くなり、上野のアメ横でごった返す人を避けるのが辛いほど、かなりの痛みを感じていました。日曜日のアメ横と、山手線1周の愛称は最悪です。
アメ横でエネルギー補給のため30分ほど食事休憩をし、次の目的地の巣鴨に向けて出発です。
上野から巣鴨まで
上野で休憩をするも、足の痛みはひどく痛みが腰にまで広がってきました。第二段階の疲労から痛みが強くなった第三段階目の疲労という感じです。
信号が赤になるたび膝に手をつき、駅に着くたび座り込んで靴を脱いで休憩していました。
足の痛みはさらに強まり、いままで感じたことのない痛みとなっていました。
このあたりは、道の起伏が激しく、この企画ではじめての坂が西日暮里~田端間にあり、田端~駒込間、駒込~巣鴨間にも長く険しい坂がありました。
また街の様子も変わり始め、鶯谷の駅前のホテル街を抜けると、日暮里から徐々に落ち着いていき、いわゆる山手線っぽくない駅前に変わりました。ファミリー層も徐々に増え、同じ山手線でも全然色が違うことがわかりました。
この区間でもっとも辛いのが田端~駒込間です。
日暮里~西日暮里間の短い距離を体験したあとに、長い距離が精神的にきて、さらに起伏が多い道が膝や腰にダメージを与えます。
しかし、そんな田端~駒込間には、山手線で唯一の踏切があり、珍しい光景をみることができます。特に朝のラッシュ時に周辺住民を苦しめる「開かずの踏切」らしいです。
巣鴨に到着したのは、17時30分頃。上野から2時間程度で到着しました。巣鴨の駅前で少し長めの休憩をとり、難所の池袋までの道に向けて出発です。
巣鴨から池袋まで
巣鴨から池袋は、かなりの難所でした。
この頃には、既に走ることができないほど限界に近く、歩く度に足裏の激痛、腰と膝にも痛みを感じていました。第三段階以上の疲労はないと思っていましたが、まさかの第四段階目の疲労がありました。
道路と側道のちょっとした段差や、日常生活では何も感じない少しの起伏でも、身体に強い痛みを感じていました。
駒込~巣鴨間が比較的距離が短かった分、駒込~巣鴨間の1.5倍くらいの距離がある巣鴨~大塚間、駒込~巣鴨間の2倍以上ある大塚~池袋間は、後半の正念場です。
息も絶え絶え大塚駅に着いた頃には、駅前に3段程度の階段を下ったところに踊り場がありましたが、そこにたどりつくのも一苦労でした。
大塚~池袋間は、大崎~品川間に次ぐ、電車の区間で2番目に長い区間です。
限界に近い痛みを感じながらの、池袋までの道のりはかなり過酷でした。
一歩一歩の歩幅は、スタート時点の半分程度になり激痛が走ります。
何度も諦めそうになりましたが、あとたった5駅で山手線一周できるという唯一のモチベーションが後押しし、気力だけで歩みを進めました。
途中、池袋駅に近づく前には、キレイな夕焼けが見え一瞬だけ心が休まる瞬間がありました。
池袋に着くころには、すっかり日も暮れた19時過ぎ。
大塚、池袋の2駅だけで1時間30分もかかってしまいました。
残すはいよいよあと4駅。ここからは、大きな休憩も取らず、一気に歩くことにしました。
池袋からゴールの新宿まで
池袋までの道のりが険しいことを事前に調べていたので、感覚的に池袋で安堵してしまったのが及第点。
実は池袋から新宿間もなかなか長い、非常にきつい道のりでした。
池袋に到着した時点で、足裏の痛みは、過去に感じたことのないほどの痛みでした。
そこから先の道は、気力だけで歩きました。小さな段差だけで言葉にならない痛みが走り、速く終わることだけを目標に苦行を続けました。
全身はボロボロの中、目白~高田馬場間で簡単な段差で足をくじき、左足にケガを負うなどトラブルが発生。
最後の気力を振り絞り、足を前に進めます。
この区間は一歩一歩が辛く本当に限界を迎えていたのですが、もっとも辛かったのは高田馬場~新大久保間の1㎞近い直線です。前半では直線が非常にありがたかったものの、終盤のまっすぐ続く直線距離は、進めども遠くに見える目的地にはなかなか近づかず、苦行にも思える時間でした。
なんとか辿りつき、新大久保についた頃には、信号待ちで立っていることもつらい状態でした。
新大久保を越え、ようやく残り1駅。残りのカスカスの体力を振り絞って、1.3km先の新宿まで歩きます。
今まで気にも留めませんでしたが、歌舞伎町入口からJR新宿駅までの微妙な坂が非常につらかったです。
そして、ようやく新宿駅に到着。時刻は20:55。
歩き12時間、休憩2時間、合計14時間の長くつらい旅路でした。
やりきった感想
山手線を一周歩いてみて、終わった頃に感じた達成感は非常に大きなものでした。
東京駅あたりから足の痛みがひどくなり、最後は一歩ごとに激痛が走り何度も諦めそうになりました。
それでも諦めず、くじけそうになりながらも歩き続けたことで「諦めなければなんとかなる」ということを体験することができました。
山手線を1周歩くことは、非常に過酷な挑戦ですが、かけがえのない経験になることは間違いありません。
東京にさえ来れれば、気軽にはじめることがでできる挑戦のため、ぜひ試してみることをおすすめします。